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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)778号 判決 1958年10月24日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人吉井晃の上告理由第一点について。

原判決は、本件土地合計六八坪は元所有者鈴木鉄太郎において昭和八年頃建物の敷地とする目的で水田を埋立てた土地であり、その後その地上に移築すべき適当な古家がないため、荒廃するにまかせ空地のまま放置されていたところ、昭和一三年頃、その隣家に居住する上告人において所有者の承諾を得て右土地を自家用の野菜を栽培する目的で耕作のために利用し、爾来その耕作を続けて今日に至り、その間に土地耕作の対価若干を所有者に支払つたことがあること、本件土地の貸借については契約証書も賃料領収の書面も作成されなかつたこと、上告人はかねて小料理屋および鍛冶業を生業とするもので、本件土地以外に土地を耕作せず、終始居住地の農会の会員ではなく収穫物を供出をしたこともないこと等の事実を認定し、これら諸般の事実関係から、本件土地は旧農地調整法二条にいう農地に該当しないと判断したのであるが、右認定の事実関係の下においては、本件土地は右にいう農地に当らないと解するのが相当であるから、原判決に所論のような違法はなく、論旨は採用することができない(所論援用の判例は本件に適切でない)。

同第二点について。

本件土地の隣地に所在する上告人居住の家屋およびその敷地を上告人が買い受けたことも、本件土地が右敷地と一体をなす土地であることも、すべて上告人が原審において主張せず原判決の確定しない事実であるから、所論前段はその前提を欠くことに帰する。また、原判決確定の事実関係の下において、被上告人の本訴請求を権利の濫用と認めることはできない。されば所論はすべて採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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